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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 勇樹は奈美の手元を見ていた。手をはなした瞬間にかわそうと思ったのだ。


 格闘家の反射神経が、弓矢の速さに勝てるのか? それだけが決め手だ。


 だが、奈美の弓矢の腕は、恐ろしいほどの命中率がある。しかも、奈美は動く標的に対しても確実に射ぬくほどだ。


 もし、0コンマかわすのが遅れたら……。


 一緒に行動を共にしていた時、一斤の食パンほどの大きさがある、巨大な蜂の大群と闘ったことがあった。


 持っている武器では避けきれなかった。


 だが、奈美は違った。


 一発の矢で、飛んで動いている巨大蜂を3匹連続で串刺しにした。


 それを見て、勇樹が思ったこと。


『動きを的確に読む予測力に加え、瞬時に照準をとらえる動体視力。的に合わせて計算された、飛ばす矢のスピードと、迷いのない威力。そのすべてを1つにまとめる集中力。こいつ、ただの中学生じゃないな』


 弓道やアーチェリーのことに対して詳しくない勇樹が、格闘家としての考えで、そう判断したからこそ、いま、自分に向けられている矢の先に、一瞬先の闇を感じていた。


 勇樹の眉間を狙う奈美。


 避けるために、奈美の手と目の動きを読もうとする勇樹。


 互いに交わることのない、目線。


 その間を阻む者がいた。


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