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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 球也はもう一度、振り返る。


 ずっと、後ろにいた勇樹はそこにはいなかった。


 球也の後ろにあるのは、先がちぎれたツルだった。


 翼竜と勇樹の重さに耐えられなかっただけでなく、風に吹かれ、勇樹がてるてる坊主のように揺られていたときに、橋のへりで、摩擦によって切れた。


 これは、ツルの耐久性の問題による事故だ。


 寂しさと悔しさに、下唇を噛んだ。


 自分にもっと力があれば、勇樹を引き上げられたかもしれない。


 前にいる奈美を見た。


 悲しむこともなく、堂々と立っている。


 自分達の仲間になる前は、勇樹と行動を共にしていた。


 そこで、勇樹から嫌がらせを受けたため、その恨みを晴らすべく、奈美は矢を向けた。


 だが、その矢は翼竜を射抜くために使い、勇樹を傷付けることは、なかった。


 その代わり、勇樹は運悪く橋の上から落下した。


 普通なら、あんなシーンを目の当たりにすれば、ショックでなかなか立ち直れないものだが、奈美は、何事もなかったように、ゆっくりと橋の上を歩いている。


 女は強い。そして、ちょっと怖い。


 球也はそう感じた。



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