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修練の鏡と精霊の大地

第14章 精霊の大地

 すると、奈美の懐から、ひょっこりとなにかが顔を出した。


 勇樹から預かった、樹木の精霊だった。


「あ、力が戻ったみたい」


 奈美が自分の肩に誘導する。


 元気になった樹木の精霊は、懐かしい故郷に帰ってきたといった表情を浮かべている。


 球也は自分の懐から、ソーヤを出した。


 残念ながら、そのままの状態で、ピクリともしなかった。


「……そうだよな」と球也は寂しい表情を見せる。


 辺りを見ると、やはり精霊達が顔を出している。


「ねぇ、精霊さん。お水が飲みたいの。教えて」


 奈美がそう尋ねると、樹木の精霊は指を差して示した。


「あの方向ね」


 奈美と球也は木々の間を、どんどん奥に進む。


 やがて、冷たくて心地よい風が顔に当たる。


 その風の中に、微かな水の香りを感じた。


 カルキなんて入っていない、不純物もない、天然の水の香り。


『ザァーー』


 水の音が聴こえてきた。


 林を抜けると、大きな湖に激しく打ち続ける滝があった。


 何もないように見えるほどの透明度。


 思わず駆け寄って、直接口をつけてがぶ飲みした。


 カラカラに渇いた喉に、冷たい甘味が染み込む。


 水が甘い。本当にそう思った。



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