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修練の鏡と精霊の大地

第14章 精霊の大地

 そのことを思う奈美は、どことなくやりきれない思いがした。


 いつも勇樹のそばにいたサックは、それを一番よく知っていた。だから、仲間意識が薄く、ギクシャクしていた。


 サックは思っていた。≪こんな連中に対して、自分は大きな力を使いたくない≫と……。


 だが、球也と奈美についていた、ソーヤは違った。


 まだ、自己レベルも上がってないうちから、レベル以上の力を仲間のために使った。


 自分の力で自分が破壊されることをわかっているはずなのに、あえて最大限の力を惜し気もなく使ったソーヤに対して、精霊の中の鑑(かがみ)として敬意を表した。


 精霊が心から尊敬した相手の精霊に、したいと思うこと。


<私の力をあなたに託させて下さい>


 同化するということ。


<ちょちょちょ、ちょー待ってや! そんなんしたら、お前がおらんようなるで!!>


 ソーヤはあわてふためく。


<いいんです。同化すれば、ずっとあなたと共に歩める。そして、私の知識、能力、寿命はあなたのもの。どうです?>


 ソーヤは目を閉じて考えた。確かに、サックが自分と同化すれば、塔で出現させた大木程度なら、パワーリーフを出すようにいつでも軽く出せる。


 パワーは倍になるのだから……。


<よっしゃ、わかった>


 ソーヤは目を開けた。


<お前はここに残れ>


<えっ!?>


 意外な返答に、サックは戸惑った。同じ種族の精霊同士が、ひとつになる行為は自分の位を上げ、その種族の中で神の領域に近付けることになる。


 ソーヤは球也を見た。


<うちは、樹木になってから、まだなんにも彼らの役にたってないねん。おそらく次の目標は、冥界や。そこまでは、今のうちでいたいんや。それに、お前とおったら意識して、また無理してしまいそうや。あの二人と下界の村に残ってるメンバーは、必ず闇神の所にいく。その時、力を貸してや>


 ソーヤはサックの前で、小さなガッツポーズを見せた。


<ソーヤさん、私はますますあなたのことを尊敬いたしました。必ず、私をあなたの力とさせて下さい>


 サックがそう言うと、ソーヤはニヤリと笑った。


「なあ、二人の友情劇はもうええか?」


 球也が待ちきれずに言った。



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