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修練の鏡と精霊の大地

第14章 精霊の大地

 球也は恐る恐る尋ねてみた。


「すいません……あの、入館の許可をもらいたいんだけど……」


「……」


 フグ顔はなにも言わない。


「あの……すいません、入りたいんだけど……許可証ってもらえるんだよね?」


「……」


 フグ顔は目をキョロキョロ動かすだけで、一言も発しない。


 いやぁ〜な沈黙が続く。


 言葉が通じないのか? なにをどう言えばいい?


「ソーヤ、わかるか?」


<そんなん、うちにもわからへん>


 お手上げだ。


「えっと……なにか、ご用でしょうか?」


 誰かが声をかけてきた。


 振り向くと、そこには見た目は人間だが、あるところに両腕が無く、胸から左右一本ずつ、前に手がのびている。


 さらに、下半身は大量の毛で覆われ、眼球はカメレオンのように飛び出し、口は唇が無く、ただ丸い穴に、歯茎むき出しの歯が見えている。さらに、鼻は無い。


 用はあるが、近寄ってもらいたくはない。


「あの、よかったら私がお聞きいたしますが……」


 別にと言いたかったが、用件を言えるのが他にいない。


 せめて、腕だけは肩らへんから出てほしいと思った。


「あ、いや、この人なんだけど、受付ですよね?」


「あ、その方はここの警備員です。受付は中に入って左です」


「警備員!? いや、こんな警備員で役にたつんかいな……」


「はい、怒ると今の倍は膨らみます」


「なるほど……頼むから、おたく3メートル以内には近寄らんといて」


「はあ、みんなそう言います。いったい、私のなにがいけないんでしょう?」


 ビジュアルだ。


 これ以上、こいつと関わりたくない。


 さっさと中に入って受付しよう。



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