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修練の鏡と精霊の大地

第15章 元の世界

「コウヤ、きいた!? その鏡、親分に返したら一千万もらえるんだって!!」


『マジか!! よっしゃ、もっかい、こいつシバく!』


 コウヤは老人をうつぶかせ、右腕を取った。プロレス技の、ワキ固めだ。


「おい、教えろ! でないとお前の腕折って鏡を破壊する」


「鏡はやめて! わしの人生を変えるチャンスなんじゃ」


 その老人の嘆きを電話の向こうで莉子が聴いていた。


「帰ろ……なんか、かわいそうになってきた」


 簡単に言えば、莉子は一千万する鏡を破壊してしまったのだ。


 男性にしてみれば、これを返せば人生をやり直すチャンスだったのだ。


「ちょっと、あんた。そんな訳わかんないやつから、上手い話されて騙されてんだよ。真剣に人生頑張ってみなよ」


 莉子はとりあえず言える言葉を選んで、言ってみた。


「あの人は鏡からいろんなもんを出してくれたんじゃ……現金も出して見せてくれた」


 男性は泣きながらそう言った。


「あんた、親分ってやつから前金貰ってるんじゃないの? そうだとしたら、それだけの仕事したと思いな。それに鏡は割れるもんだよ。あんたの扱いによっても割れたかもしれないじゃん」


「チクショ……」


 男性は体を震わせながら、莉子の顔を睨み付けた。


 その表情を見て、莉子は背筋に寒気を感じた。


「な、なによ」


「お前が……鏡を割ったから……鏡を割ったから……」


 そう言うと、力をこめて拳を握った。


「あんたが、ハッキリしないからでしょ。知ってること全部話さないからだよ」


「俺の人生を……」


 男性はテントから出ると、ゆっくりと立ち上がった。



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