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修練の鏡と精霊の大地

第15章 元の世界

「なに? なにをする気?」


 莉子は後ろに下がる。


 男性は、テントの後ろにあったナタを手に取った。


「なに……ちょっと、それはダメよ」


「うるさい! お前、殺してやる!!」


 男性はナタを振り上げた。


「やめなさいよちょっと! 危ないから」


「うるさい! ぶ、ぶっ殺してやるぅ!!」


 鏡を破壊されたことは、自分の人生を破壊されたのも同じ。それならば、この女も破壊してやる。男性の思いは強かった。


 危険を感じたのか、莉子は一歩ずつ後退りをする。


「ちょっと……たかが鏡1枚で人を殺めるわけ? あなた、なにをしようとしてるか、わかってんの?」


「んなこたぁ、わかってるよぉ……もう、俺は死んだんだ。死んだんだよぅ……だから、お前殺して、刑務所行って飯だけでも世話になるよ」


 男性のその目は本気だった。


「あ、そうだ、電話……」


 莉子は電話を耳にあてた。まだ、コウヤに繋がっているはずだ。


『プーッ、プーッ、プーッ、プーッ』


 切れていた。


 突然、莉子はバランスを失った。


「キャッ」


 莉子は下がりながら段差のある所に、足をとられ、後ろに倒れてしまった。


 男性の顔に笑みがこぼれる。


『殺られる……』


 莉子は砂を投げようとも思ったが、そこは固いアスファルトの地面。


 砂なんて指先でつまむほどしか取れない。


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