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修練の鏡と精霊の大地

第16章 天の悪魔

「ほう、喋る精霊か。こりゃ、珍しいわい」


 淀屋橋はソーヤに関心を示した。


<うちらは、闇神っちゅう天の悪魔を倒しに来たんやで!! それが存在せえへんって、どういうこっちゃ!?>


 ソーヤは自分が活躍する場を失われたことに、苛立ちを感じていた。


「ソーヤ、落ち着きいな。そやけど、僕らはいったい何を目標にしてきたのかが、わからんなぁ」と球也は頭を傾げる。


「答えのひとつがこれじゃ」


 淀屋橋は茶色い毛に覆われた、10cmもみたない小人を出した。


 それを見たソーヤは驚いた。


<うわぁっ!! こいつ、生物の精霊やん!! 数少ない仲間の精霊やで!>


「えっ、レアなん?」と球也は聞いた。


<レアもレア。うちかて会うたん初めてやわ!! なんで持ってんの!?>


 種族は違えど、同じ精霊のソーヤが興奮している。


「ほんの少し前に見つけたんじゃ。わしが鬼みたいな怪物と闘おうとしていたとき、声が聴こえた。『お前達、妖精は破壊する』と。私は人間だと言ったら、その鬼は去っていったんじゃ。そしたら、足元に毛にくるまれたビー玉ほどの小石があったんじゃ。それが、こいつじゃ」


 淀屋橋は精霊を肩にのせた。


「人間だっ……て言ったら去っていったの?」


 奈美が聞いた。


「そう。つまり、この精霊が鬼と会話させてくれたんじゃよ」


「ほんなら、妖精の敵にはかわりないんやから、倒したらよろしいやん。奈美ちゃんから聞いてますよ。おじいさん、武道の達人らしいですやん」


 剣を持って、チャンバラの動きを真似ながら、球也が言った。


「なぜ、怪物達は妖精を襲うのか? 考えたことあるかな?」


 考えたことなど、まったくない。



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