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修練の鏡と精霊の大地

第16章 天の悪魔

「闇神!? うん……よし、行ってみよう。ちょっと見てくる」


 そう言って、球也はやや緩やかな坂を下っていった。


 白い扉の前に来ると、妙な緊張感が胸をしめる。


「やべ……なんやこの口では説明できへんドキドキは……」


 ドアのぶに手を伸ばす。


『パチッ!』


「痛っ!!」


 なぜか、静電気。


「むっちゃ怖かった……なんやねんなもうーっ!!」


 その様子を遠くからみている、奈美と淀屋橋。


「あの子は手を出したり引っ込めたり、なにをしとるんだね?」


「たぶん、怖いんだと……」


「意外と臆病なんだな、あの少年」


 球也は入るか入るまいか、扉の前でうろうろしている。


「でも、勇気ある人だよ。なんか、お兄ちゃんみたい」


 奈美がクスッと微笑みながら言った。


 淀屋橋はそんな奈美を見て、悲しげであり寂しそうな表情を浮かべた。


「奈美……すまんのぅ、心配かけたな」


 それを聞いて、奈美の表情も強張る。


「おじいちゃん……この世界に来たってことは、なにか理由があったんだよね?」


「お前の声で、その質問をされるとは思わなかった……」


 嬉しくもあり、辛くもあった。だが、その目は遠くにいる球也を見ていた。


「わしは、どうしようもない男だったんじゃよ。わしが行方不明になったのは、実は多額の借金があってな」


「借金!? どうして?」


「個人経営が上手くいかなくてなぁ、税金も納められなくて、なにもかも差し押さえられたんじゃよ。しかも、古い友人の借金の保証人になってたばかりに……」


「それで……どうしたの?」


 奈美は、聞くのが怖かった。だけど、せっかく会えた、たった一人のおじいちゃん。いま、その、おじいちゃんの話を聞けるのは自分しかいないと思った。


「わしは川にでも飛び込んで、自殺をしようかと考えた。保険金で返せると思ったんじゃ。しかし、ホームレスの男性に止められてな、願いが叶う鏡をわたされ……。起死回生を願いたいのと、せめて、お前の声を取り戻したいと思って、ここに来たんじゃよ」




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