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修練の鏡と精霊の大地

第16章 天の悪魔

「そんなことがあったんだ……」


 奈美は、すべてをグッと堪えて聞き入れた。


 遠くで入る勇気が出ずに、地団駄を踏んでる球也を見ながら……。


「わしは思った。そんな願いが叶うとかいう鏡を、なぜ、ホームレス自身が使わないのだろうかと。わざわざ、ホームレスのままでいる必要ないじゃろ」


「それもそうね……でも、こんな世界が待ってるって知ってるから、使わないかもね」


 その目は球也を見ていた。


 球也は何度もドアのぶを握ってははなし、握ってははなしを繰り返す。


 見かねた奈美が「ちょっと手伝ってくるね」と、球也のもとに走っていった。

 球也は何度も深呼吸を繰り返した。


「相手は神様神様。そう、直接願いを伝えたらいい……うん、大丈夫」


 不安と緊張が入り交じる。


 淀屋橋の話も半信半疑だ。もし、闇神だったらという恐怖もある。


「……よし、今度こそ」


 ドアのぶを握った。


 その横から、細くて柔らかな手が添えられた。


「あっ!?」


 奈美だ。


「一緒に行きましょう」


 奈美は笑顔で言った。


 球也はその目を見て、頷いた。


 淀屋橋は二人をジッと見守っていた。


『カチャ』


 ついに扉が開いた。


 そこに現れたのは……球也と奈美だった。


「!」


 二人とも言葉を失った。


 扉を開けたすぐそこに、球也と奈美がきょとんとしている。


「な、なんだこれ?」


「それは鏡じゃよ」


 二人のもとへ、やってきた淀屋橋が、言った。


 それも、雲に乗って。



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