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修練の鏡と精霊の大地

第16章 天の悪魔

 中は光の無い、真っ暗な闇の中。


 淀屋橋の姿が見えない。


「あれ? ちょっと、奈美ちゃんのおじいさん?」


「わしはここじゃ」


 赤い光に照らされた、淀屋橋の顔が見えた。


「ちょっと!! それ、不気味っすよ!! 稲川さんの怪談ライブじゃないっすか!!」


「火の精霊に照らしてもらってるんじゃよ。ここも思った以上に暗いのう」


「ここもって、他なにか入ったんすか?」


「わしは、精霊の大地の前に、ここの丘に来たもんでな。なんか、間違えて龍神さんの扉を開けたんじゃよ」


「龍神でっか!? そこも鏡でしたか?」


「水が流れておったわ」


 球也と淀屋橋が話していると……。


「どなたかな? やけに騒がしいですね」


 宝塚歌劇の男役のような声。


 闇の中で響く声に驚き、奈美は球也にピタッとくっついた。


「いやいや、申し訳ございません。私達は人間でございます。明かりは大丈夫ですか?」


「まぶしいのは勘弁しておくれ」


「はいはい、いますぐ……」


 淀屋橋はそう言ったあと、火を消した。


「珍しいですね。こんなところに人間が来るなんて……」


「あの……あなた神様ですか?」と球也が尋ねる。


「神様か……うむ、人はみなそう呼ぶの」


 どうやら神様のようだ。


「じゃ、すいません。僕を野球部のレギュラーに戻してくれることと、ドラフト会議で指名されることと、出来たら縦じまのユニフォームを……」


「待て待て……」


「すいません、今日はお賽銭は用意してないんですが……」


「だから、待てっ!!」


「うわっ!! 神様もつっこむんや!!」



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