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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

 気が付けば、辺りも薄暗くなっていた。


 もうすぐ太陽も、遠くの山に隠れてしまう。


 徐々に風が強くなり、肌寒くなりつつある。


「あ、あの村じゃないかな?」


 奈美が下を見て、人差し指で示す。


 それほど大きくはない家が建ち並び、人が動いているのが見える。



「あの村っぽいな。ユングさんが、水を持って先に帰ってるころやわ。純化さんもコウヤさんも待ってるで」


「うん……だけど、ちょっと怖い」


 村に本当の目的の答えがあるのかも知れない。そんな不安が、奈美の胸の内を締め付ける。


 翼竜は、村の外側に下りた。


 奈美は淀屋橋を起こし、村に到着したことを告げた。


 淀屋橋は腰にくくられたツルをほどこうとした。


 だが、超固結びで、なかなかほどけない。


 球也と奈美は翼竜から降りると、スタスタと村に到着入っていった。


 奈美はおじいさんが着いてきていると、思い込んでいた。


 だが、翼竜は背中に淀屋橋を残したまま、飛び立ってしまった。


 二人は村に入った。すぐに、穏やかでないことに気付く。


 数人の村人が倒れ、他の村人はクワやシャベルを持って暴れている。


 その相手は、ユングだった。


 球也はなにくわぬ顔で「ただいま戻りました。あれ? ユングさん、なにを遊んでるんすか?」と言葉をかけた。


 ユングが振り向いた。


「球也!! 助かったぜ!! 助太刀頼む!」


 ユングはサイ(両手に持てる、先が三股のモリのような武器)を手に、村人に向かっていった。



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