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修練の鏡と精霊の大地

第3章 冒険の旅へ

 小さな手を、一生懸命に振る姿を見ると、複雑な心境になる。


「バイバイ、またな。元気でな」


 出来たら引き止めてくれと、切に思う。


 だが、いつまでもこのままだと何も終わらない。意を決して、旅に出る。


 RPGの主人公って、こんな感じなんだろうか?


 ファンタジーとは程遠い、へんぴな田舎村を、トボトボと歩く。


 さっきまで自分の姿を見て「勇者様!!」と歓喜の声をあげていた村人は、ただ、ニコッと笑って会釈するだけだ。


 球也は何気に自分が出てきた泉に、足を運んだ。


 覗きこむと、かなり深そうだ。


 飛び込む勇気がない。


 球也は四つん這いになると、泉の中に顔を突っ込んで見た。


 冷たさでキュッと顔が引き締まる。


 自分が出てきた入り口など無く、底が見えないくらいに深い。


 さらに、サメに似た巨大な魚もグイグイ泳いでいる。


 いま、こんな所に飛び込んだら、間違いなくあいつの食卓に並ぶ。


 冒険に出ても、どんな魔物が出てくるかもわからない。勝てばいいが、負けたら死ぬかもしれない。


「いまのままじゃ、どっちみち餌やん……」



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