テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第18章 闇の者

 どこかにいないか? 球也は電気をつけ、部屋の中を探しはじめた。


 すると、優也がドタドタとなにも持たずに入ってきた。


「兄貴っ!! こんなことしてる場合ちゃうで!! 外、外、見てみ……」


「なんや、急に……結局お前、飲み物持ってきてへんやんけ!!」


 球也は窓を開けて、空を見た。


 空が血のように赤く、雲が渦を巻くように、グルグルとうねっている。


「な、なんだ?」


 異様な光景に度肝を抜かれた。


「兄貴が起きる前、地震があって、結構大きな揺れだったから、ニュースかなにかやってないかって、テレビつけたんよ。そしたら、全国でどえらいこと起こってて、なんかパニクッてて……」


「いや、お前がパニクッてるだろ! てか、ずっと気になってることがある。兄貴って呼ばれると堅気でないもんに思われるからやめろ」


「えぇーっ!? こっちの方がかっこいいのに……」


「そういえば、父ちゃんと母ちゃんは?」


「危ないからって、先に非常持ち出しリュックと荷物まとめて逃げた」


「息子ほっといてなにしとんねん!!」


 球也はボストンバックに適当に荷物をつめた。


「あとは、グローブとバット……」


 優也は携帯電話をかけている。相手は彼女のようだ。


「あ、もしもし、遅くにごめん……あ、起きてた?」


 優也の通話を横目に、球也はため息をもらす。


「とりあえず、様子を見よう」


 荷物を持って、リビングに向かった。


 テレビをつけると、どのチャンネルにも速報が流れている。


 アナウンサーが防波堤を背に、マイク片手に生中継をしている。


『いま、大阪港に来ております。ご覧のとおり、波が大きく荒れており、空は夕焼け以上に真っ赤に染まっております。先ほど、太平洋側で巨大な生物が跳び跳ねているといった、目撃情報が寄せられておりまして、地震とこの空模様になんらかの関係があるのではないかと……』


「マジか!?」



 球也は違うチャンネルに変えた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ