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修練の鏡と精霊の大地

第18章 闇の者

 その様子を球也は、やや引目に見ていた。


「で、お主はなんじゃ?」


 どうやら、球也のことを覚えていないようだ。


 球也は鏡を付き出した。


「いろいろ聞きたいことはある。まずはこれ、あんたに返す」


 タクノアンは体をもぞもぞとくねらせた。


「あ、鏡か……。しかし、選ばれた者が誰一人目的を達成しておらん。報酬は無しじゃ!」


「えっ!? 報酬なんてあったん?」


「なにを言っておる。すべてが終わって鏡を返却すれば、一千万の報酬をやると言ったじゃろ」


「嘘やぁ!! 一千万持ってたら、ホームレスなんぞしてへんやろ!!」


「アホッ!! わしは持ってなくとも、力がある!! その力で金を出すくらい、お手のものじゃ」


「だって、会ったとき、そんな話してへんかったやん!!」


「なに?」


 タクノアンは目をこらして見る。


「すまんが、そこにおる者、もうちょい近寄ってくれんか?」


 球也は言われた通り、タクノアンのそばによる。


 その距離、約20cm。


「おぉ、なんじゃ昨日の若者ではないか。たしかに、わしが直接わたした相手じゃからの。そりゃ、話はしておらんわい……てか、近すぎるのぅ……」


「じいさん、口臭いわぁ……歯茎、腐っとんちゃう?」


「余計なお世話じゃ!! ええ加減、こいつをほどけ!!」


 タクノアンは必死に抜けようとするが、草も何百本本束ねるとロープのように固くなる。


「じいさん、あんたにはいろいろ聞きたいことあるからね。ほどきたいんやったら、自分の力を使こうてできるやろ?」と球也は上から見下ろして言った。


「両手を前に出して念をこめなきゃ、できんのよ。しかし、河川敷の草もえらい強いもんじゃの」


<タンポポと、なずなと、ヨモギが頑張ってくれてるわ>


「わしは、その辺に当たり前のように生えてるけど、あえて摘んでまで食べようとしない山菜に負けておるのか」



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