テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第18章 闇の者

「出来るかぁっ!! わしは日本昔話の、なんにでも変身できる山姥じゃないんやぞ!!」


「あ、それ知ってる!! 和尚さんが山姥に、ちっちゃい豆に変身出来るかと言って、自信満々に変身した山姥を和尚さんが食べて退治する話……あの、ミルクレープに変身できる?」


「わしを食うつもりかっ!! なんで、お主のいま食いたいものに変わらにゃならんのじゃ!! それが出来るんやったら小さい物に変わって、すぐ抜け出しとるわいっ!!」


「そりゃそうだ。俺もジジィが変身したミルクレープなんて食いたくないしなぁ」


 球也とタクノアンが言い合っているとき、突然、白い光が二人を包んだ。


 振り向くと、そこに2つの人影。


「おい、そこでなにをしている?」 


 よく見ると、そこにはライトを持った警察官が二人いた。


 すると、タクノアンが言った。


「あ、お巡りさん!! あの、助けてください。この若者が突然、わしを縛って、バットを持って、わしをここから落とそうとするんじゃ」


 それを聞いた球也は焦りだした。


「いや、ちょっと待ってちょっと待って、この、ジジィ、むっちゃ悪いやつで……」


 状況を見てか、警官はタクノアンに味方した。


「これは、なにをしているんだ?」


 警官は球也に詰め寄る。


「いや、違いますって……僕はこのジジィに……」


「きみ、名前は? こんな時間になにをしているんだ? いま、どういう状態になっているのか、わかってるのか?」 


「だから、お巡りさん……僕は闇の者を……」と球也はタクノアンを指差した。


 警官は球也が示した方に目を移した。


「う、うわっ!!」


 警官は声を上げた。


「な、なにぃっ!?」


 球也も驚いた。


 そこには、2メートルほどの巨大な蝶々が、タクノアンを掴み、空に羽ばたいているところだった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ