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修練の鏡と精霊の大地

第18章 闇の者

 くくられた状態で持ち上げられたタクノアンは、勝ち誇ったように高笑いをする。


「アッハッハッハッ、若者、その目で人間界が廃界されるのをしっかり見ておくんじゃなぁ」


 タクノアンはそう言い残して、飛び去っていった。


「おい!! その老人をはなせっ!!」


 警官の一人がピストルをかまえる。


 だが、蝶々の飛びかたはゆらゆらとしていて、なかなか照準が合わない。


「だめだ、このまま発砲すると老人に当たる可能性がある……」


 むしろこの場合、当たった方が平和のためにいいと、球也は思った。


 警官の一人が無線を繋げる。


「こちら、○○地区の河川敷。いま、巨大なアゲハ蝶みたいなやつに、なにかにくくられて身動きが取れない老人が連れ去られました」


 この隙を見て、ソーヤが言った。  


<なあなあ、あれ見てみ>


 草むらの中に鏡が2枚置いてある。


「なんだよ、これと同じ鏡じゃないか」


 球也は自分が持っている鏡を見せる。


<違う、あのうちの1枚は、魔鏡と言って、あのじいさんの持つ、マジの力が入った鏡なんや。うち、あんたに会う前、ずっとタクノアンとおったから、知ってんねん>


「だからって、どうすんの?」


<あのうちの1つ、青い石がはまってるやつがある。それを使えばいい>


 そうは言われても、球也には、どうすればいいのかわからない。


 警官の一人は蝶々の行方を追っている。こんな事態だと、犯罪を起こしそうに見えた球也よりも、そっちの方が重大なのだろう。


 もう一人は、なぜか巨大なヤギに匂いを嗅がれている。



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