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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

 純化はコクリと頷いた。


「うちはあの世界で、ペタロさんと地割れの中に吸い込まれたんよ。すごい力だった……で、気がつけば、家の床で倒れてた」


「え、それって、夢じゃなくて?」


「夢だったら、いまここできゅう坊と会って話されへんやんか。でも、夢が叶った。うちの体から、妖精の力が消えてるもん」


 純化は人間と妖精の間にうまれ、両方の遺伝子を受け継ぎながら育った。


 しかし、人間の世界で、自分の存在と能力に違和感を感じ、自分は人間になりたいと、切に願っていた。


 以前、人間は悪という心が純化に芽生えはじめていた。世の中で起こっている、自然破壊や汚染問題に憤りを感じ、やがては憤りの感情をこえて、戦争での破壊や、憎しみによる犯罪のニュースを喜びに感じていた。


 だが人間は、みんな悪い人ばかりではない。


 真面目に良い行いで生きている人に、悪いことは起こしたくないという気持ちもあった。


 人間と妖精の感情の交差。妖精と言っても、闇の者の成れの果て。純化も闇の細胞を承けている。


 そんな自分がいやだった。だから、純粋な人間になりたかった。


「うちは、自分の能力を役立てることは出来ないかと、占い師をはじめた。でも、妖精の力は占い師としては不向きな力やった。充分な力を発揮したら、妖精という裏の自分も出てしまう。それがいややったから、人間になって、人間としての占い師として生きたかった」


「それで、その話を聞いた老人から、修練の鏡を預かったってことか……」


「そう!! 老人!! うちは、その老人を探してんのよ」


 純化は自分に鏡を預けた老人を見付けるため、ライト片手に、一人で深夜の山へ入っていたのだ。



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