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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

「ん、なんかちょっと違うが……とりあえず、その鏡を持ってるなら、しばらく俺のそばにいろ」


「まさか……わしが受け取る一千万を横取りするんじゃ、あるまいなぁ」


 老人は鏡を抱きしめた。


「そこまで悪いこと考えねぇよ。だが、じいさんよ……本気で俺と離れない方がいいかもな……」


 コウヤは立ち上がって、赤い海を見た。


 10メートルほど先の浅瀬に、人影が見えた。


 それがゆっくりと、こちらに近寄ってくる。


 老人も、その存在に気が付いた。


「あ、あれはなんじゃ?」


「わからない……けど、俺は逃げてはいけない気がする」


 コウヤは老人の前に立つ。


 老人は震えながら、その人影を指した。


「なぁ、二人……いや、三人いるぞ」


 分裂するかのように、人影が増えていた。実際には真後ろに並んでいたのが、横にずれただけの話だ。


 よく見れば、頭の上に三角の尖ったものが、2つ見える。


 まるで、動物の耳のようだ。


 ゆらゆらと体をゆらしながら、こちらに向かってきた。


「じいさんよ、あんたは、その鏡を守っていろ。逃げるなよ」


「わしは、あんたの技をくらってクタクタなんじゃ。逃げれるもんか」


「それは自業自得で、不可抗力だ」


「いや、あんたの所為じゃろ!!」


 人影はついに、砂地に足をつけた。


 波の音がこの時ばかりは、不気味なBGMに聴こえた。


 うっすらと赤みをおびた月の光が、その者達を照らし出した。


「くっ……なんだよこいつら……」


 海から出てきたそれは、人型で白い毛に覆われ、キツネのような顔をしていた。


 老人は声を震わせて言った。


「あ、あれも……あんたの、せ、設定か……?」


「こんな設定、どうやって考案実行できんだよ。これは、マジでヤバいパターンだよ!! なんだよあれ、キツネ人間か?」



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