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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

 コウヤは例えてそう言ったが、二本足で立ち、ゆっくりと歩いてくる様子は、まさしくキツネ人間という呼び名にふさわしかった。


 キツネ人間はコウヤを見つけると、ゆっくりと近付いてきた。


 老人は腰を抜かしてへたりこんだ。


「ば、ば、化け物だぁーっ!!」


「確かに化け物だな。しかし、化け物だぁーって、人が本気で叫んでるのは初めて見たぜ」


「に、逃げなきゃ……あんた、なにしとる!? 逃げな……」


 老人は、なんとか足を動かして逃げようとするが、立ち上がることができず、ただ、その場でバタバタしているだけだった。


 コウヤは逃げなかった。


 逃げてはいけないと思った。いや、それ以上に、闘う気でいた。


「おい、じいさん。危ない目にあいたくなかったら、その鏡をしっかり持って、俺の後ろにいろ」


「あ、あんた……」


 老人はなぜか胸がキュンとした。


「おい、その代わり、訳のわからん感情を芽生えさせたりしたら、俺の拳をてめえの血で濡らすことになるから覚悟しとけ」


 老人の気持ちが、キュンからゾクッに変わった。


 三体のキツネ人間は口元を薄く、笑うように開けた。


 白い牙がかすかに光る。


「おい、なんだてめえら。何者だ?」


 コウヤは下がることはせず、逆に一歩二歩とキツネ人間に近付いていった。


 近くで見ると、全身ウサギの毛のようなものに覆われ、体つきも、なよっとした細身。背丈も、コウヤとさほどかわらない。


「どうやら、敵のようで……」


 そう言うと、コウヤは一体の胸元に右肘を打ちこんだ。


 その流れから、右側にいたもう一体の顔面に左拳を突き、左側にいた三体目に回し蹴りを浴びせた。


 キツネ人間の表情が一瞬、苦痛に歪んだ。



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