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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

 なぜ、最初に仕留めなかったのかと、コウヤは自分自身を苛む。


 ふと思い出した。幼い頃に見た、テレビのヒーローが変身しようとしている時に、なぜ、敵は攻撃しないのか?


 その答えがわかった気がした。


 ついに、すべてのキツネ人間の体格が細い体から、ムキムキのボディービルダーのように変貌した。


「くっ!! ヤバいな……あんな体格のやつと闘ったことねえよ……」


 コウヤはプロレスラーと言っても軽量級。試合でも体の大きい外国人レスラーとは、対戦したことがなかった。


 老人は、あわててコウヤに近付いた。


「ちょ、ちょ、兄さん、あんなの相手に勝てるわけないよ……謝っちゃいな」


「あぁ? なに言ってる。俺はプロレスラーだ。あんなやつにビビってちゃあ、プロとは言えないだろ!!」


「けど、相手は三人だ。あんた一人じゃ無理だ! かと言って、わしはあんたの師匠じゃないから、闘えないぞ」


「もう、そんな設定、とっくに忘れてたわ」


 老人の助太刀はいらない。足手まといになるだけ。


 だが、正直に言えば、恐ろしさもあった。相手は人間ではなく、未知の怪物。そんなものは、あの世界で嫌というほど対戦してきたコウヤだったが、今回は武器も無ければ、精霊もいない。


 己の肉体を武器にしなくてはならない。


「こんな早く重量ヘビー級にあたるんだったら、もっとプロテイン飲むんだった……」


 今さら、なにを食おうが、鍛えようが間に合わない。


 コウヤは先手必勝で向かっていった。


 ほとんど、やけくそだった。



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