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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

<そうか、さっき球也が鏡を持ってたから、近くにでかい虫やら、ヤギやらがおったんや。つまり……あの鏡はまだ、ただの鏡やなかった>


 ソーヤは、空を見上げた。


 赤い空の中に、渦を巻いた雲が出来上がっていた。不吉な予感がする。


<みんな、鏡を奪うで!!>


 ソーヤが念を飛ばし、近くの草木が急激に伸び、一斉にキツネ人間へと襲いかかる。


 だが、キツネ人間は片手でそれを、次々とかわす。


「それがどうかしたか?」


 キツネ人間は余裕の表情を見せる。


<マジっ!? アカン……鏡の力、なめとったわ>


「よし、まかせぃっ」と球也は、ソーヤを純化に預け、バットを握りしめた。


「このやろーっ!!」


 球也はバットを持って、攻撃をかける。


 だが、キツネ人間はすいすいと避け、球也を子供扱い。簡単にあしらう。


「待った! てめえの相手は俺だ!!」


 コウヤが、鏡を抱えているキツネ人間の腕を掴む。


 キツネ人間はすぐさま体勢を変え、コウヤの体を軽々と片手で持ち上げた。


「うわっ!! マジか!?」


 コウヤはそのまま海に投げ込まれた。


「ソーヤ!! パワーリーフを頼む!!」と球也が手をのばす。


<よっしゃ!! なんとしてでも鏡を奪い取らな>とソーヤがパワーリーフを出そうと、気を念じる。


 鏡を持ったキツネ人間は素早い動きで、大きくジャンプをした後、他のキツネ人間の前に立った。


「行くぞ」


 そう言うと、二人のキツネ人間を鏡と一緒に抱え、海にむかってジャンプした。


「くそっ!! 待てっ!!」


 ずぶ濡れになったコウヤが叫ぶ。


「さあ、これで王の力が増えた。また会おう」


 そう言い残すと、キツネ人間達は海に潜っていった。


<アカン、逃げられた……>


 ソーヤは自分の力もまったく通じず、なにもできないまま逃がしてしまったことを悔やんだ。



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