テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

 みんな集まらなければ、動くに動けない。


 球也は待つことにした。


 と、その時……。


「どぅわーっ!! なにやってんだてめぇーっ!!」


 荒々しい男性の声がした。


 球也と純化はその声に驚き、鏡から出てきたソーヤも、声を出す間もなく驚いて廊下に落ちた。


「待て待て!! 俺はただ着替えてるだけだ!!」


 コウヤの声が響いた。


 球也と純化は、鏡とソーヤを抱え、声のする方へ駆け寄った。


「どないしたんすかっ!?」と球也が声をかける。


 そこにいたのは、ピチピチになったスウェットに身を包んだコウヤと、格闘家の佐田勇樹だった。


「さ、佐田さん!!」と球也は思わず声をあげる。


 その存在に気が付いた勇樹は、まるでランプに火を灯したような表情を浮かべた。


「球也じゃねえか!! おい、どうしたんだあっ!」


 勇樹は笑顔を見せて、球也の背中をバンと叩く。


 球也は嬉し笑いを浮かべた。


「よかったぁ〜、佐田さんが、あの橋から落ちた時、もう死んだかと思いましたよ……」


「いや、俺もあの時は、もうダメだと思った。だが、落ちた瞬間、自分の部屋にいたんだ。正直、なにが起きたかわからなかったし、今もよくわかっていない。それより……」とコウヤの方をチラリと見る。


「なぜ、こいつがここで、丈の合わないスウェットを無理矢理に着込んでいるんだ?」


 勇樹は怪訝な顔をして言った。


 コウヤはぐしょ濡れになった自分の衣類をまとめながら、嫌なことを説明させるなと言わんばかりの表情を浮かべて言った。


「キツネの顔した闇の者の使者とケンカしてよ、俺が海に投げ込まれたんだよ」


「はぁ? なんだよ闇の者の使者って?」


「俺達が闘っている、本当の敵だ」


「なに言ってんの? それはあの世界の話だろ?」


 勇樹の質問に、球也が答える。


「いや、ちゃうんです。そいつらが、この世界にはみ出してきたんですよ」


 球也の話に、勇樹は顔をしかめる。


「それって、暗黒の釈迦とか、お前らが探してた闇神だろ?」


 勇樹は虹と光の橋を渡る後のことを、なにも知らない。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ