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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

 鏡の中から出てきたのは、小人の村で出会った、ユングだった。


「うぉーい!! ごきげんさーん!!」


 ユングはピースサインをしながら、鏡を出る。


 黒い長袖のシャツに半パン姿で、足はサンダルをはいている。


 鏡にこしかけるようなかたちで、下におりようとする。


「ちょっと暗いし高いなぁ……肩を貸してくれ」


 ユングにすれば、莉子の目の高さは、自分の身長よりも倍近く高い位置になる。しかも、光が微かにしかないため、飛び降りるには気がひけた。


「まかせろ」とコウヤが、ユングの体を抱き上げ、床に下ろした。


「サンキュー、また会えたね」


 ユングは照れ臭そうに言った。


「おい、無事だったんだな!!」


 勇樹が中腰になって、ユングに声をかける。


「いや、あの世界で俺は村人に殺されたんだよ。けど、一瞬にして自分の部屋に戻ってた」


「みんな、それぞれいろんな形で、元に戻ってきてるんだね」


 莉子がしみじみに言うと、宙に浮かんでいた鏡が落ち、パリンと音をたてて割れてしまった。


「あっ!! 割れちゃった!!」


 ユングは慌てて破片を拾う。


<かまへんて、こんなん割れたほうがいい。闇の者に奪われる前に全部割って、使いもんにならんようになったほうがいいからなぁ>


「いや、俺は元に帰れるのか?」


 ユングは心配する。


<大丈夫、この鏡が残っていればどこでも行ける>


 ソーヤは青い石の付いた鏡を指差して言った。


「よかった……それ聞いて安心した」


 ユングはホッと胸を撫で下ろす。


「ユングさん、本当の戦いの舞台が日本になりそうです」と球也が言うと、ユングは目を閉じて、右人差し指を立て、チッチッと横に振った。


「もう、ユングってのはやめてくれ。それはあの世界での名前だ。藤山輝って名前があるから、輝って呼んでくれ」



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