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修練の鏡と精霊の大地

第19章 移動、そして集結

 勇樹は晴幸を黙らせると、ソーヤに頼んで、青い石の鏡を使えるようにしてもらった。


<いま、玲美って人のいる近くに移動出来るようにしたで>とソーヤが言った。


「よし、まず、玲美の所に行って、訳を言って鏡を壊してこい。それから、結実子に電話して、鏡を壊すように言うんだ。用がすんだら、自分の鏡を使って家にでも帰るんだ。そして、その鏡を壊せ」


 勇樹は青い石の鏡を指差して言った。


「僕はここに戻っちゃいけないんですか?」と晴幸は悲しげに言う。


「みじんにも戦力にならないやつなんかいらない。まあ、暗黒の釈迦に向かっていったってことは認めてやるが、勝手に先走った行動して、危うく本物の仏を始末するところだったんだ。そんな先を見れないやつを、俺は仲間に入れたくないんだ」


 勇樹は厳しく言い捨てた。


 勇樹のセリフを聞いて、莉子がコウヤに肘うちをした。


「おい、聞いたかレスラーのあんちゃん。あんたもよき先走ったよねぇ〜」


「う、うるせぇ……」


 コウヤは口を尖らせた。


 晴幸は下唇を噛みしめ、黙って頷いた。


「わかりました。僕が二人を守ります」


「筆下ろしの相手は大事にしてやれよ。てか、本当の年齢をちゃんと言えよ。この老け顔のとっちゃん坊や」


「それ、言わないでくださいよ……」


 そんな晴幸とのやり取りを見て、みんなは笑った。


 晴幸にとっても、わずかながらの楽しい時間だった。


 だが、そこまで時間は待ってくれない。


 晴幸は自分の鏡を持って、青い石の鏡に手を入れた。


「じゃ、行きます。みなさん、頑張って下さい」


「気を付けてな。もし、近くにモンスターが出たら、絶対に逃げろ」


「わかりました」


 勇樹の忠告に、晴幸は大きく頭を下げた。



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