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修練の鏡と精霊の大地

第21章 そして……

 だが、その上にもっと嬉しいものがあった。


 コウヤ、勇樹、莉子、輝の四人が「かっ飛ばせ、球也!!」と書かれた横断幕を持って座っていたのだ。


「おい、キュウ!! 俺達にも甲子園で応援させてくれよっ!!」とコウヤが声を飛ばした。


 コウヤと勇樹はすでに試合をしており、球也は残念ながら、見に行くことが出来なかった。


 結果は勇樹の判定勝ちだったが、コウヤも意地を見せ、果敢に攻め続けていた。


 勇樹はしっかりと球也を見つめ、自分の心臓辺りを指差して、無言で頷いた。


「勇樹さん……」


 球也にはその意味がわかった。


 そう、胸の中には、自分だけの修練の鏡がある。


 今こそ、その鏡に自分を写し出す時。


<よっしゃ! 球也ならできるで!!> 


「ソーヤ!?」


 空耳だった。


 だが、球也の耳には、その声が届いた。


 みんなの気持ちを胸に集め、その気持ちを修練の鏡が写し出す。


 力がみなぎってくる。


 ピッチャーが渾身の球を投げた。






 ダイナミックな空振りだった。


 ……負けた。


 完全なる空振り。


 呆然とした球也の目には、時間が止まって見えた。


 なぜ、止まる? なぜ、少し前まで時計が戻らないんだ?


 だが、なにか様子がおかしい。ベンチが手を回している。


「へっ?」


 キャッチャーがボールを受け損ねて、バランスを崩して転がっている。



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