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修練の鏡と精霊の大地

第21章 そして……

 みんなが見ている。応援をしてくれている。


 その時、ホームベースがヌカーに見えた。


「また、てめぇかーーっ!!」


 トドメを刺すように、体全体で滑り込んだ。


 土煙が舞い、口に入る。


 それと同時に、バシッとミットが唸る音がした。


 審判の判定。


 球也の指が、ほんの少し、ホームベースに触れていた。


 審判の手が、真横に何度も広がった。


「セーフセーフセーーッフ!」


 勝った。


 球也が最後を占めた。


 振り逃げから、相手のエラーと暴投の連続で掴んだ勝利。


 球也は恥ずかしくて、しばらく顔を上げれなかった。


 キャプテン金吉が横たわる球也の肩を、ポンと叩いた。


「やったな。今回の相手も勝ったら甲子園初出場やったんや。土壇場のプレッシャーに勝ったんはうちやで!!」


 甲子園初出場。球也は嬉しさ半分、恥半分だった。


 バックネットで観戦していたコウヤ達は、手を叩いて大笑い。


「やるなぁ、あいつらしい勝ち方だ。立派だ」とコウヤは頭上で手を叩いた。


「キュウ、おめでとーっ!! 凄いよ甲子園だよ!! よかった、海外に行く前に思い出を土産にくれるなんて」


 莉子は感動で涙を流していた。


「あれが、球也の味なんだよ。実力と運。最後は完璧に運を味方につけたな」と勇樹が言うと、輝は一言「青春だなぁ〜」としみじみ言った。



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