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修練の鏡と精霊の大地

第1章 黄昏時に出会して……

 気分を紛らすようなものは何もない。


 家に帰れば攻められ、学校にいれば責められる。


 部屋も、弟と同じ部屋。肩身が狭いとかいう次元の問題ではない。


 今の球也には、広い河川敷の土手が一番、心休まる場所だった。


「スカッと何もかも変えられることないかな……」


 球也はそう呟くと、足下にあったコーヒーの空き缶を、思い切り蹴飛ばした。



『カンカンカラカラカーーン』



 甲高い音と共に、アスファルトで固められた散歩路に転がっていった。


 すると、球也の背後から、かすれた声て何者かが、呼び掛けた。


「これ、そこの学生」


「?」


 球也は振り向いた。


 そこにはボロボロで薄汚い衣類を身に付けた、一人の初老の男性がいた。


「こーら、むやみやたらと蹴飛ばしたらいかんじゃろうがぃ」


 男性はそう言うと、背中を曲げ、ヨタヨタと近寄ってきた。


 肩まで伸びた髪はボサボサで、白髪混じりのためか灰色に見える。


 口が隠れるほど伸びた髭は白く、何処かの山で修行してきたかの様な貫禄さえ見受けられる。



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