Dioic
第4章 あか
時々考える。
体は同じでも、ぼくの中には2人の人間がいるのではないかと。
男が純。そのぼく。
女が違う。もう一人。
普段はぼくが主人格となり生活している。
だが性欲を満たす時、欲望にかられる時、良平を思う時、
彼女は現れる。
ぼくの目を後ろから手で覆い、語りかけてくる。
長い髪が頬にちろちろと当たる。
「いいじゃない。その方が楽よ」
「そうよね。気持ち良くなりたいものね」
「こっち見てよ純。わたしはいつもここにいるわよ」
本当にいるのかと思うほど、手の温かさ、ぬくもり、上からかかってくる吐息の熱、どれもリアルだ。存在しているかのように。
いつもは手で覆い隠されて、されるがまま。ぼくは何も言わず彼女が満足して手を離すまで何も言わないし何もしない。
彼女は笑う事もあれば不機嫌そうに悪態を吐く時もある。
女は本当に情緒不安定だ。
今日もぼくの目を覆い、語りかけてくる。
「今日何で薬飲まなかったの?痛いのはあなただけじゃないんだからちゃんと飲んでよね」
うわ、今日は生理の愚痴か。
クラスの女子と一緒だ。
「眠る前にちゃんと飲んでよね。わたしだって寝付けやしないわ」
ふんっ、ときつめにいってくる彼女。
さすが生理1日目。苛立っている。
ぼくもそうなのだから。
「あーあ。はやくタンポン付けたい。あんな所までいちいち変えにいくのは面倒だわ」
それはぼくも同感だ。
休み時間トイレ以外何もできないったらない。
「なんでほんと女は生理くるのかしら。男もペニスから射精したら血が出てこればいいのに」
なんて理不尽だ。
男はそもそも子宮がないのだから血が出てくる理由がないだろう。
その時、目を覆っている手に力が入った。
左目右目を少し指の腹で押してくる。
なんてことはない。
少し驚いたが、目を潰されたりはしないし。
珍しいな、こんなことしてくるなんて。
ぽちゃ
ん?
なんだ?
口の横に、水が垂れてきた。
額にも、一滴、また二滴と何かが垂れてきている。
え?うそ。まさか
「・・・なんで、しゃべってくれないの?」
なんだ?
こんなのはじめてだ。