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Dioic

第4章 あか

戸惑った。
彼女がこんなに取り乱しているのははじめてだ。
生まれた時から一緒なのに、何なんだ。


髪が揺れて、頬を行ったり来たりする。




「ねぇ、純」


なんだ、どうした


「生理だからかしら。今日は特に重い日だし」


そうだね。ぼくも今日はとっても眠かったしお腹が痛かった。


「わたしは強いあなたなのに、激しいあなたなのに、泣くのなんてはじめてよ」


そうだね。
どちらかといえばぼくがいつも戸惑わされて泣いていた。


「あなたはいつもわたしを認めない。見ようとしない。認識しようともしない」


だって、認めたらぼくは二重人格になるじゃないか。そんなのは嫌だ。


「わたしはあなたと共存したいのに、あなたはわたしを無視する。自分が男であり女であるのにも関わらず、わたしを認めようとしない」


それはぼくな男だからだ。



「今日は変な気分。あなたにどんな言葉でもいいからかけてほしい気分よ」



変な奴。
ほんとうに女って変。



「純。純。純。純。・・・純」


何度も呼ぶなよ。何で呼ぶんだよ。


「返事を・・・してほしいわ」


返事?



「わたしはあなたでありあなたではない。男ではない。女だけれども純の一部であり純である」



そうだね。
その通りだよ。



「あなたは思っている。わたしを認めれば女になってしまうと。純ではなくなると」



うん。
だってぼくは男でいたいから。



「でも、それは違うわ。わたしも純なのよ」



知ってる。
だから君はぼくの作ったただの幻想。
認めたら個体になってしまう。




「認めたって、何したって、純という人間は一人しかいないのよ」



なにを、分かったような口を。



「言葉が聞けなくても、あなたが言いたいことは大体分かるわ。生まれた時から一緒だものね」



ぼくはいつも君が分からないけどね。



「わたしはあなたに、認知してもらいたい。存在を認めなくていい。あなたの側にわたしがいることを感じてほしい」


確かにいるけど、これは現実じゃない。



「現実だろうが幻想だろうがそんなことはどうだっていいの。」

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