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Dioic

第1章 異形

父親はヤク中だった。風俗嬢と恋に落ち、やがて赤子を宿したが、父親は自殺。風俗嬢は少しでも養育費を奪おうと子を産むが両生器具種の奇形児である事に怯えて見捨てた。弟の姉に親権がすぐ移され、養子に。
ヤク中であった父の家系は都内でいちばんの規模と設備を誇る大病院を経営する一族なのだ。
金城家に養育費をもらおうと風俗嬢は思っていたのだ。
姉は結婚相手が外科の医師であり、同情もあり引き取る。
同じ年に生まれた子供、良平と同じく育てられた。
名前は純。男にも女にも取れる名前。

戸籍上は男となり、男として生きてきた。夫妻には幼い頃から純は男と女の間だと言われて育ったものの、13歳まではなんら変わらず男の子だった。

だが、13歳中一の冬に純は生理になる。
両生器具種だと実感のなかった純は自分は普通ではないのだと感じる。

月経が始まってからは女性ホルモンの分泌の増加により、より中性的になっていく体つき、いつまでもあまり変わらない声。

そして14を過ぎた頃から純を一番悩ませたのは、女性としての性的欲求だった。
純は月経が来た段階から自分が男なのか女なのか分からず精神的に不安定であったが、あることをするとすっきりして普通の青年として生活できるのだ。

それは、セックス。

純は学校帰りに満喫に寄り女性の服に着替えたり化粧をしたりカツラをかぶったりした。
念のため最寄の駅ではなく新宿や渋谷や東京など人が多い駅前で前もって見つけた都合のいい中年男性と行為に及んだ。
その際、純の男性としての性器が露わになるが、彼を抱く男たちはそんなこと気にしなかった。
「ニューハーフなんです」
と嘘を吐けば簡単に信じた。
避妊などしない。
純はホルモンのバランスを崩さないために日常的にピルを飲んでいた。

女になった時の純は、淫らだった。
事が終わったときはいつもとてつもない嫌悪感で吐き気が止まらないがそれでもやれられなかったのだ。

自分は、男なのか女なのか。

男でいたいと思う感情がある。
否、性的欲求は女性として湧き上がる。
だがはっきり女性になると自分への嫌悪感で呼吸することさえ危うい。
そうやって逃げて中途半端な男になる。

その、くりかえし。
くりかえし。

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