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Dioic

第2章 目覚め

誰にも望まれない死は、幸せ。
でも誰もが望む死は、不幸。

ぼくは不幸になりたくない。

でもほんとうは不幸である。

不幸であるはずなのにぼくは幸せ。


それは罪であり、ぼくは報いを受けなければならない。
罰を受け入れなければならない。

罰とは、痛いものではだめだ。
体が切れようと、痣ができようと、四肢がどれかなくなろうとも。

痛いのはだめだ。

ぼくをほんとうに傷つけなければならない。


ぼくの心は愚かだ。
醜くて汚れていてくすんでいる。


でも、幸せを知ってしまった。

幸せを知ると、どんなに汚い心でも綺麗になったように錯覚する。

ぼくは錯覚していた。


生まれながらにして汚れている口も喉も内臓も。


綺麗になったような気がしていた。



他人が見たらただのカップルが行う性行為とはかけ離れたセックスで受精されたぼくは。

薬を使って快感を増幅させたおしべとめしべによって生が生まれ、空気に触れて産まれてきた。


汚れた出来の悪い精子と
何人も受け入れて開ききった子宮によってぼくはこの世に生きた。


出来の悪いラリったおしべのせいで色素が日本人とはかけ離れたぼく。

あばずれの売春婦のせいで顔だけはお面のように美しいぼく。

中身は同じ。


おしべとめしべのように腐りきっていて、汚くて、不潔。


この二人のせいで、ぼくは男でもないし女でもない。



この人間とはかけ離れた姿で生まれてきたぼくは、罪がある。
罰をうける。
報いを受けなければならない。



自分では何もできなくとも、それを見なければならない。
どんなに気味が悪いと言われようとも。
ぼくは黙って見ていることはできない。

ぼくの光が、傷つく前に。


ぼくの光がぼくの手をよって消えてしまう前に。



ぼくは、見なければならない。
罰を受けなければならない。


ぼくは、普通じゃないから。

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