テキストサイズ

馬と鹿の咄

第17章 駅のトイレで……

【駅のトイレで……】


 これは、4年前でしたかねぇ。


 店が終わってから、駅まで向かいましたら、まあ、急に下がキンときましてね。駅でトイレに入ろうと思ったんです。


 そこの駅の男性トイレは、小便器も大の便器もひとつずつしかないんですよ。


 入ろうとすると、前にスーツを着たサラリーマン風の方がいましてねぇ。


 背の低い、ちょいと小太りの、ドランクドラゴンの塚地さんを、かわいくした感じの人が、先に小をしてたんです。


 便器が、ひとつしかないわけですから、その後ろで待ってたんですな。


 するとその男、小をしながらゆっくり振り向いて、僕の顔を見るなり「うわぁ」て驚いたんよ。


 もちろん、僕しかいなかったわけで、どう見ても僕の顔を見て驚いてた。


 まあ、僕は体格もあるし、当時はちょっと顔付きが多少いかつかったから、気持ちはわかる。


 おしっこ我慢してるんだから、ちょいと難しい形相にもなってたかも知れません。


 私、見た目と違い人畜無害の大人しいお兄様(おっさん)なのよ。


 そんな脅えて驚くことなかろうよ。


 そしたら、その男。


 小をしながら少し左に寄って……


「あ……ど、どうぞ」


 ……。


 いや、なんであんたとひとつの便器で、一緒に放尿せにゃならんのよ。


 そんな勧め方ある?


 嫌すぎるだろう。てか、初めての展開で、マジで困惑したわ。


「いえ、お気遣いなく……」と、言ったら声にならない声で「すいません」と言って、正面でやりはじめた。


 てか、その人長いんだ。よく出るなぁ。どんだけ溜まってたんだ?


 電車来たから乗ったけど、駅に着くまで我慢してました。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ