『甘い蜜』
第16章 甘い蜜 16
―隼人side―
「何か嬉しそうですね、いい事でもあったんですか?」
俺の秘書的な役割を果たしてくれている千崎が眼鏡をかけ直しながらクスリと笑う。
「…いや、なぜそう思う?」
俺はいつもと変わらないし、何もないつもりだ。
「表情が柔らかくなった…」
「俺はいつもと同じ顔だろ?」
「アナタは…、自身の事になると鈍感なんですね。」
千崎は何がそんなに可笑しいのか腹を抱えて笑い転げていた。
「今日、下級生のクラスに行ったのでしょう?」
腹を押さえたまま見上げる形で千崎が俺を見つめる。
「あぁ、それがどうした?」
千崎が何を言いたいのかよく分からない…
「…いや、珍しいなと思っただけですよ。」
にっこりと微笑んだ千崎が俺に向かって書類を手渡した。