『甘い蜜』
第17章 甘い蜜 17
江波隼人…
今日ずっと頭を離れなかった言葉。
「…帰ろ。」
結局、アイツが現れたのは昼休みの一回きり。
別に会いたいワケじゃないけどさ…
アイツが何を考えているのか分からないから不安なだけ、ただそれだけだ。
「神埼、帰るのか?」
廊下をトボトボと歩いていた俺に気づいた倉本が、走って追ってきた。
「あ、うん…倉本は部活じゃないのか?」
いつも引っ掛けている部活用のカバンが見当たらない。
「顧問の先生が休みなんだって…、暇ならどっか遊びに行かないか?」
倉本がいつもの無邪気な笑顔でブイサインして見せた。
たまにはいいよな…。
俺も今はアイツの事なんて忘れてしまいたい気分だから。
「…行く!」
倉本に応える様に俺もブイサインをして見せた。