
はしたない女の子は好きですか?
第1章 ▼たまらないのはこっちだ。
「うん、馴れ初め!」
真実は頭を少し大袈裟に縦にふる。
さっきの話題をかき消すように。
「馴れ初め、か…」
私はぼーっと新さんとの出会いなどを思い出していた
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「ご注文のほう以上でよろしいでしょうか? はい、それでは少々お待ちください」
去年から私は、家の近くの定食屋さんでバイトをしていた。
接客が嫌いではないし、賄いは美味しいしで、私はとても楽しんでいた。
土日は基本朝から出て、平日は夕方から。
平日の夜にご飯を食べにくるお客さんの中に新さんの姿があった。
最初は顔立ちが綺麗な人だな程度にしか思ってなかったけど、何回も見るうちに、箸の持ち方が綺麗だなとか、生姜焼きが好きなんだなとか気づいた。
新さんがくるのは閉店の時間近く。なので店内には新さんを含め数人のお客さんしかおらず、新さんは店長とよく話していた。
その話を横から盗み聞きしているうちに、名前だとか職場だとかを知ったのだ。
無愛想なのに店長と話すときは少し柔らかい笑顔を見せるところ、会計の時私にお疲れ様と言ってくれるところ、少し低い声。
最初は見た目がカッコいいから気になる程度で、それからもっとその人を知りたいと思って、その人とご飯を食べたいって思った。
だからある雪が降る日に、新さんがマフラーを店内に忘れたのを、私はチャンスだと思った。
本当はマフラーを忘れていることを会計の時に気づいていた。でも、私はわざと会計をそのまま済ませて、お店を出た新さんを追いかけてマフラーを渡しにいった
