テキストサイズ

陽だまりの唄

第2章 恋愛模様 in 隠れ家 ①

***** 理人 side *****

俺のいる世界は一見華々しいけど、同時に嫉妬が渦巻く醜悪なところでもある。

芸能界にいると、いわゆるイイ女とかキレイな女が溢れてる。
俺だって男だから、気が合った女と付き合ってみたこともある。
でも、なんか違うんだよな。
何が違うのかって言われても分からないんだけど。
結局そう思ってしまえば心は離れていくばかりで、別れるという選択肢しかない。

モデルとしてスカウトされ、この世界に入って10年を過ぎた俺は、この数年で俳優の仕事も引き受けるようになってきた。
演じることは楽しいと思う一面、ますます人間同士のどろどろした場面に遭遇することが多くなっている。巻き込まれないようにかわす術はかなり身についたと思う。

正直、疲れていた。
だからタカさんの経営する居酒屋『隠れ家』で過ごす時間は料理も酒も俺にとっての癒しだった。

ある日。
タカさんの店に行ったら、初めて見る女がカウンター席にいた。
貴重なプライベート時間にファン気取りでベタベタされるのはごめんだから、離れた席に座って何となく様子を見ていた。

黒いパンツスーツのカッコいい若い女。
これが第一印象。

その後も何度か店に寄るたびにその女を気にするようになったが、もちろん毎回会える訳ではない。

半年くらい経った頃、思いきって声をかけてみた。
彼女は時任陽菜と名乗った。
近くで見れば、可愛らしい笑顔が印象的だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ