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陽だまりの唄

第1章 変わらない日常

「そろそろ昼飯食べに行こうぜ」

声のする方向に目を向ければ、榎本先輩が朝より更に疲れた表情で私を見ていた。

「先輩の顔見たら、疲れがうつってきそう…」

「時任もあのババア達の相手してみたら分かる」

「…無理でーす」

強烈キャラのおばさま達と宿泊旅行なんて絶対イヤだ。生気吸い取られそうだもん。


この辺りはオフィス街だから、リーズナブルで美味しいランチを提供しているお店が多くてありがたい。


入った定食屋でそれぞれ注文を済ませると、榎本先輩の添乗話を聞く。

先輩は本当に話上手だし聞き上手。
話の内容にも抑揚感があるから、相槌を打つのも忘れてしまうくらい面白い。

添乗員同士の交流の機会ってなかなかないから榎本先輩の話を聞ける私は恵まれてる。


「時任も来週1本入ってなかったか?」

「日帰りが、1本入ってます」

「どの辺りまで行くの?」

「駿河湾をクルージングしてきます」

「俺もそういうのがやりたいんだけどなあ」

榎本先輩は頬杖つきながら漬物をつついている。

「この時期はまだ寒いから、気乗りしないんです」

「確かにな。体調管理だけは気をつけとけよ」

私は頷くと、食後のお茶を飲み干した。







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