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僕は君を連れてゆく

第22章 ネクタイに指をかけたら


「はぁ~♡」

スマホにさっき、届いたメッセージ。

ー今夜も行きますね。ー

敬語なのに、NOと言わせないこのメッセージ。
カッコいい…

面接したときから、いや、書類選考のときから好みの顔だった。
でも、上司という立場からそんな、感情を捨てて面接をした。
彼は優秀だ。
彼から出てくる言葉には力があって、優しさもあった。
面接しているのは俺達なのに彼の巧みな会話術で彼のプレゼンを聞かされているような空間になって、そして、その場で社長の大野は、君を採用する!と言ったんだ。

彼が入社して1年がたって、彼に大きな仕事を任せてみた。
プレッシャーに押し潰されそうなる彼、窶れていく彼。
本当に魅力的だった。

彼はそんな大きなプレッシャーをはねのけ見事にプロジェクトを成功させた。

彼はそのプロジェクトの打ち上げ会場で一人で静かに酒を飲んでいた。

いつもなら、輪の中心にいる彼が珍しいと思い声をかけた。
「主任って笑うと可愛いんですね…」と微笑んだ。


伸びてきた髭。
乱れた髪型。
緩めたネクタイ。
そこから見える喉仏。

たまらなく、厭らしくて…

「もっと、可愛くなる俺、見たくない?」

そう言ったら、飲んでいたウィスキーを口移しされた。

そのホテルの最上階に行くまでのエレベーターの中で蕩けるようなキスをされた。

そして、部屋のドアを開けて入ったら、そのドアに押し付けられて、彼がネクタイを外しながら
「本当に可愛い顔だ…」と低い声で耳元で言ってきた。

それから、俺達はベッドで繋がった。

朝起きたら彼の腕の中にいた。
そして、俺は告白したのだ。

彼はニッコリ笑って「ありがとう。」と言ってくれた。
それが半年前。

今でも夢なんじゃないかと思うときがある。
朝目覚めて、背中に感じる温もりで夢ではないと実感出来る。

体に残る、翔の温もり、匂いを閉じ込めたくて。
翔が起きる前に身支度を整えてしまう。

俺だけの翔をこの体に閉じ込めたくて。

こんなこと知られたら…
翔はどう思うだろう。


今夜も彼に会えるという嬉しさ。
これは、夢じゃない。

ー待ってる。ー






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