僕は君を連れてゆく
第22章 ネクタイに指をかけたら
相葉から、次のプロジェクトのことで相談に乗って欲しいと言われてついていったら資料庫に来ていた。
「相談って?」
「主任っ!」
抱き締められた。
相葉の腕がきつく俺の体を締め付ける。
「やめろ。相談ってのは嘘か?」
「好きです。」
「離せ。」
切羽詰まった声からからかいとかではなくて、真剣なんだということが伝わってくる。
でも、俺には…
「恋人いるんですか?」
「…あぁ。」
「俺ずっと、主任のこと…」
「悪いな。俺はどうでもいいが、俺のせいでアイツが悲しむのは嫌なんだ。」
顔をあげた相葉の顔は歪み涙を浮かべていた。
「好きだっ!」
とキスをされそうになって体を捩って逃げる。
が、力が強くて…
ネクタイに指をかけられワイシャツを引っ張られた。
ボタンが取れてどこかへ飛んだ。
そして、首もとに相葉の顔が近づいてきた…
ヤバイ!と思ったら、相葉の顔は離れた。
「スーツの下にこんなの、隠して…いつつけられたの?」
と、鎖骨を撫でられた。
そして、今朝、翔の家で見た自分の裸を思い出して…
「夢中だから、いつ付けられたのか分からない。」
そう答えた。
だって、そうなんだ。今朝、起きたら鎖骨、脇腹、背中、太もも…あらゆるところに紅い痣がついていた。
いつ、つけられたかなんて覚えてない。
ただ、翔に愛されている。
それを感じていただけだから。
「人のモノに興味ないんで…」
と、資料庫から出て行った。
助かった…
と思ったのも束の間。
相葉が出て行ったドアから翔が血相を変えて入ってきた。
言いづらそうに、言葉を探しているようで…
ボタンのとれたワイシャツ。
ほどけたネクタイ。
何があったかなんて想像出来るだろう。
でも、何もなかったから。
相葉は翔と同期だから、これからも仕事をしていく仲だから…
俺は何も言わないと決めた。
言い訳は逆に誤解を招く可能性もあるからだ。
「わかりました。」
そう言って出て行った翔の顔は淋しそうだった。
俺は昨夜、つけられた紅い痣をなぞった。