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僕は君を連れてゆく

第22章 ネクタイに指をかけたら


何事もなかったかのように資料庫を片付け、身支度を整えフロアに戻ると主任の行方が分からないと小さな騒ぎになっていた。

「どこに行ってたんですか!携帯持たないで!」

「悪かった…」

主任はいつもの主任。

「櫻井まで、どうしたんだよ?大丈夫か?」

「なんか、事故とか、事件に、巻き込まれてるのかと思ったよ。心配したんだよ。」

「すまなかった!」

主任がみんなに頭を下げた。
俺も慌てて隣に並んで頭を下げた。

「つい、昔の資料に見いってしまって…」
と、手にはファイルとディスクが。

いつのまに…

「あれ?それ…三年前の?」
みんながその資料に釘付けになった。

「そうだ。俺が初めてやったやつだ…」

「見たいです!」

「隣、空いてるぞ。」

ザワザワと数人が資料を持って出ていった。

俺は自分の身支度となんて言い訳しようか、そんなことばかり考えていたが、主任は違った。

きちんと、あとのことを考えていた。

「櫻井。」

主任が俺を呼ぶ。

見ると、眼鏡を外して微笑んだ。

そして、ネクタイをキュッと握った。

きっと、今の俺は情けない顔をしてるだろう。

どこまでも、甘えてばかりの俺が本当に情けない。

「すまなかったな、付き合わせて…」

「いえ…俺こそ…いつのまに、ファイルなんて…」

「ずっと、見ようと思っていたんだ。」

そんなこと言ってるけど本当かな?

「…」

「気にするな…」

コホンと小さく咳をした主任。
顔を隠しているけど、耳が赤い。

「体、大丈夫ですか?」

「♯□◇◎○#!?!?!?」

俺はニヤリと笑ってデスクに戻った。

やっぱり、主任は可愛い。

俺だけの主任なんだ。

デスクから主任を盗み見る。

あの眼鏡は主任の戦闘服なんだ。
そして、ネクタイも。

今夜、会えるのかな…

「櫻井!」

「相葉…」

「だらしねぇ顔だな…」

「うるせぇよ。」

「2番、電話だぞ。」

「おぅ…」

俺は電話をとった。相葉は頷いて、投げキッスをしてきた。

「ぶっっっ!?あっ、失礼いたしました…」

相葉を睨んだら、笑っていた。

「これくらいで許してやるよ!」

そう言って相葉も、どこかへ電話をかけ始めた。





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