僕は君を連れてゆく
第22章 ネクタイに指をかけたら
大野社長から直々に電話なんて。
まさか、主任とのラブチュッチュッを見られたんじゃ!!!
と思ったら、その通りで…
あの資料庫は社長、自ら管理しているとのことで…
資料庫の壁側にあった小さくもなく、大きくもない窓が3つ並んであって、そこが社長室から見えるのだそうだ。
そして、その窓から快感に溺れる主任の顔。
野獣と化した俺の顔が見えたって…
何してるのか一目瞭然だったよって…
きっと、さっき、主任にかかってきた電話。
社長、主任に何を言ったんだろうか…
イラつきながら電話をきってたな…
にしても、本当に気をつけなくちゃ…
社内でイチャコラしちゃ、ダメだね。
就業時間がきて音楽が流れた。
「お疲れ~」
「櫻井、たまに付き合えよ~」
「いやいや、今日はちょっと…」
「いつもじゃん!たまにはさ~」
「マジで、ごめん!」
手を合わせて断った。
これは毎週末のやり取り。
毎週末、断るのに誘ってくれる同僚たちに申し訳ないけど。
顔をだしたいなって思ってはいるんだ。
「じゃぁ、俺が行こうかな?先月、いけなかったし!?」
と、助け船をだしてくれたのは相葉だった。
「えっ!!相葉さん♡来てくれるんですか♡」
女性社員の声が黄色になった。
「櫻井は用事があるみたいだからね~」
と、俺に目配せをした。
ありがとう!相葉!
今度、奢るよ!
鞄を持ち会社を後にした。
駅まで徒歩で10分弱。
少し歩くと主任から電話がかかってきた。
「はい。櫻井です。」
『もしもし?もう、出たのか?』
「今、出たとこです。」
『乗っていくか?』
「え?」
『あ、いた!』
声がする方へ体を向けたら車の窓から顔をだした主任がいた。
「いいんですか?こんなとこで…」
俺は小さい声で確認をした。
「もう、みんな出たあとだよ…早くしろって。」
少し、照れてるような…
助手席に座った。
運転席の主任。
顎のラインがとても綺麗だ。
ゆっくりと走りだした車。
スローで静かな曲が流れてくる。
この空間が、ずっと、続けばいいのに…
「なんだ?」
「え?」
「なんか、ついてるか?」
「いや…って、社長から電話ありましたよね?なんて言われたんですか?」
顔を真っ赤にして、社長とのやり取りを話してくれた。