僕は君を連れてゆく
第25章 お祭りの後は…
それから撮影中ニノは、俺と目を合わせてこなかった。
カメラマンからの声にイチイチ、肩を揺らして反応するニノに俺は目を細めた。
ニノは、もしかしたら、経験があるのかも…
俺はそんなことを思った。
「じゃ、前後になって手を二宮さんは前で、そう、後ろ!」
ニノに覆い被さるように抱きついた。
「わぁ!ちょ、まっ…」
「そうそう、仲良しな感じで…」
後ろから抱き締めて、ニノ耳元で囁く。
「なんで、俺のこと見ないの?」
「え?そんな…」
「ほら、前見て!撮影中だから。怒ってる?」
小さく囁く。
耳に息を吹き掛けるように。
「怒ってなんて…」
カメラマンたちがいる手前、大きな声をだしたり、
俺から離れることも出来ないニノ。
「そう?よかったぁ。」
ぎゅうううっとニノを抱き締め襟足に顔をうずめた。
「ニノ…」
いい匂いだな…
「おーい!松本さん!目線はこっちね!」
「はーい!」
それからも、手を合わせたり、二人で腕相撲してみたり…
撮影を終えた。
ニノは戸惑っているんだろう。
こんなことをしてくる俺に。
任せてくれればいい。
「お疲れさまでーす!」
楽屋に引き上げる。
さぁ、ここからどうしよう。
「俺、トイレ寄るわ…」
ニノは俺から逃げるようにトイレへ駆け込んで行った。
「怖がらせちゃったかな…」
俺はこの後コンサートの打ち合わせがあるけれど、少し時間がある。
ニノはどうだろう。
飯でも行こうかな…
「ニノ、大丈夫かな…」
なんか、気になったからトイレへ行った。
でも、そこにニノの姿はなかった。
「あれ?おかしいなぁ…」
マジで怒らせちゃったのかな…
なんて、少し意地悪しすぎたかな、なんて反省して楽屋に戻っていたら、ある俳優さんの楽屋から大きな音がした。
ガタンっ!!!
そして、中から声が…
「いや…やめっ!」
ニノじゃん!
「そんなつもり…」
おい、おい!どうしよ…
近くには誰もいなくて、飛び込もうか、それとも
誰か呼びに行こうか…
「潤っ、くんっ!!」
ニノが俺を呼んだ。
ドアを勢いよく開けて中に入った。
そして、きちんとドアを閉めた。
そこにはニノを押し倒す、俳優さんが…
涙を浮かべるニノ。
「いつも、お世話になっています。」
俺は努めて冷静に挨拶をした。