僕は君を連れてゆく
第29章 BB
「咲ちゃん、きちんと親御さんに話してみようよ。親御さんの気持ちも考えてみなよ。」
「そんなの、必要ない!あたしの話しなんて聞く気ないんだもん!好きになっちゃったんだもん…それだけなのに…」
「咲、もう一度、お前の両親と話してみよう。やっぱり、堂々と付き合いたいから。」
前田咲がトイレから出てきた。
手越は駆け寄り自分のジャージを脱いで前田咲の肩にかけた。
「ゆうやが、風邪ひいちゃうよ?」
「俺は平気!」
なんだよ!
この甘いムードは!
「と、とにかく、捜索願いは受理されてるから君を署に連れて帰らないといけない。」
ルールはルールだ。
「親御さんも待ってる。心配してるんだ。顔を見せてあげよう?ね?」
「お願いします。」
二人をパトカーに乗せた。
パトカーは走りだした。
短くなったタバコを携帯灰皿にしまった。
ちっとも吸えなかった。
「お前、なんなの?なんで、遅れたの?」
「いやぁ、お婆ちゃんが大荷物持って歩いてるから声かけたらこっちの方が家だって言うからさ…」
「それで、荷物持ってあげて家まで送ったの?」
「そうなんだよ。家ついたら玄関の電球が切れててね、1ヶ月もそのままだっていうから付け替えてさ…そうしたら、お茶どうぞ!なんて言ってくれて…」
やっぱり。
そんなことだろうと思った。
「あっそ。あのさ、ペアで動けって言われてるわけ。お前が居なくて色々、言われんの俺だかんな!せめて、携帯はでろよ!」
「いつも、ニノがそこら辺うまく言ってくれてるじゃん!助かってるよ?」
ね?ニノちゃん!と頭を撫でられた。
胸の携帯が鳴る。
「はい、二宮。はい。今、署に…そうです。はい。そうですか、わかりました。あとで書きます。はい。戻ります。はい。」
「署長?」
「感動の再会みたいになって、親御さんも捜索願いを取り下げたらしいよ。あ~ぁ、アホみたい。」
「そっか。よかった。手越さ家庭教師だったんだって。向こうから告白してきたみたいだけど大学に合格したら付き合おうって話してみたいだよ。」
「じゃぁ、まだ、付き合ってないの?っていうか、お泊まりしてるってことは、スルことしてんじゃないの?未成年相手に…そっちだ!そっちでひっぱればよかったんじゃないの?」
「そういうことは、一切してないって言ってたよ。」