僕は君を連れてゆく
第29章 BB
「さっき、お婆ちゃんを送っていったじゃん?そこの家の仏壇に札束が置いてあった。」
「札束?」
「うん。剥き出しで…おかしいよね…」
ここ数年、度々ニュースになっている振り込め詐欺。
手口は年々、巧妙になっている。
俺たちの管轄内でも被害にあったという話を聞く。
相葉は…
事件を引き寄せるというか…
自分から近づくのか…
だけど、こういう勘はだいたい、当たってる。
「テーブルの上に花が飾ってあったりさ…荷物ってのも買い物したみたいなんだよ。息子から10年ぶりに連絡があったって。もてなしてやりたいからってことでたくさん食材買い込んだってことだと思うんだよね…」
つまりは、ずっと音沙汰なかった息子から10年ぶりに連絡がきた婆さん。
そこにはその息子をもてなすための料理の準備と花。
そして…現金。
これは怪しい。
「ニノはどう思う?」
自信があるからこそ、俺に話してるだろうに。
確認をとる顔は少し、不安気だ。
「気になるね。」
「だよね!そうだよね!よし。ちょっとお婆ちゃんの身元確認してその、息子っての探してみるわ!」
足取りが軽くなって相葉は俺の腰に腕を回して右手を上げてタクシーを止めた。
ドアが開いて、どうぞ、と先を譲ってくれた。
こういうところはサラッとしていて紳士的で。
カッコ良く決まるのは外見のせいだろうか。
「どうも。」
俺はタクシーに深く腰掛け外を眺めた。
相葉は婆さんのことでも考えているんだろう。
「やっべっ!経費で落ちないんだ!タクシー代!」
泣きそうな顔で俺を見る。
俺は可笑しく涙が出るほど笑った。
「お前が出せよ?」
「ワンメーターじゃ無理だよね?割り勘にして!」
「なんでだよ!お前がタクシー止めたんだろっ!」
「くそっぉ!カッコ良く決めたかったのに~!」
俺は絶対に出さないからなっ!