僕は君を連れてゆく
第29章 BB
俺はあの婆さんの自宅の回りで聞き込みをすることにした。
不審な人物や車は見ていないか。
一人暮らしと分かれば、最近、変な電話がかかってきていないか、家族との連絡はとれているのか。
一軒、一軒、回っていく。
「お忙しいところすいません。山風警察署の二宮と言います。お伺いしたいことがあります。」
ある、ドラマでの有名な台詞。
事件は現場で起きる!
そうだ。
だから、現場に向かわないと分からないんだ。
数軒の家を回ったが、普通の見た目はなんとも幸せそうな家族がいる家だった。
独り暮らしの家なんてもうないんじゃないの?
足も痛くなってきたし…
なんなら、喉も乾いた。
一服、しようかな…
コンビニを探しに角を曲がった。
「うわっ!!!!!」
自転車を二人乗りした若者がものすごいスピードで
俺の横を通り過ぎた。
あまりのスピードに俺はよろけて電柱に体を預けた。
「なんなんだよ…危ない…」
自転車の二人乗りは道路交通法で禁止されている。
「まったく…」
にしても…
すごい、顔してチャリンコに乗ってたな。
興奮してるというか…嬉しそうというか…
違うな。
追われてる…逃げてる…
「………」
なんか、胸騒ぎがする。
俺はあの二人組が走ってきたであろう道を進むことにした。
こっちはそうだ、あの婆さんの家の方だ。
駅から遠いからなのか、静かだ。
空き家が多いのか、まだ、昼過ぎなのに洗濯物を干す家も少ない。
玄関先の花壇も手入れがされておらず枯れている。
「………」
あいつらは、何でこんなところから自転車できたのか…
ふと、玄関の手前の門が空いてる家が目に入った。
門の取っ手、玄関のドアノブは埃もないし、使われているのがわかる。
「婆さんの家だ…」
玄関先は荒れている。
訪ねてみるか…
インターホンが見当たらない。
「すいませーん!すいませーん!」
玄関をノックした。
応答はない。
俺はポケットからハンカチを出してドアノブを掴んだ。
深呼吸をして開けた。