僕は君を連れてゆく
第29章 BB
思った通り、鍵はかかっておらずガチャと引いたら玄関はあいた。
「おばあちゃん?いる?」
玄関はサンダルが揃えて置いてある。
体を伸ばして中を覗きこむと、揃った足の裏が見えた。
「……」
そして、玄関を上がったところには土のついた靴の跡。
俺は反対側に回ることにした。
荒れた玄関先を通る。
ドクン、ドクンと大きくなる心臓の音。
「あ、相葉?婆さんの家に来て。殺られてるかも…あ一、あと一課長にも報告して。うん。そう。救急車呼んで!そっちも連れてきて!大至急な!」
反対側に回り窓から婆さんを確認する。
胸が上下に動いている。
よし、生きてる…
窓は開いていなかった。
目を凝らしてみると、仏壇にあったという、現金がなくなっていた。
まさか、あいつらが…
俺は、玄関に戻り、婆さんに駆け寄った。
「おい、おばあちゃん!目、開けて!」
頭から血を流している。
傷はそんなに深くなさそうだ。
唇も切れている。
「くそっ!!」
救急車も呼ぶようにさっき、相葉に頼んだ。
まだか…
すると、婆さんがゆっくり目を開けた。
「大丈夫?誰にやられた?」
「だい、じょぅぶよ…」
婆さんは微笑んだ。
俺の手をギュッと握った。
「もうすぐ、救急車来るからね!」
見上げたら、さっき自転車に乗っていた二人がいた。
「…お前らだな…金はどうした?」
一人のやつは黒いキャップにマスク。
もう一人は黒いニット帽に首にマフラーを巻いている。
婆さんに気をとられてて全く気がつかなかった。
さっきは気がつかなかったが手にはバットを持っている。
その先端は赤い。
俺は婆さんの頭の傷をもう一度見た。
くそっ!
さっきと同じように興奮していて笑っているような、瞳孔が完全に開いていて、気持ち悪い顔をしている。
何をしでかすか、わからない。
背中がヒヤリと冷たく感じる。
汗をかいていて、自分が物凄く緊張しているのがわかった。