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僕は君を連れてゆく

第31章 熱視線


雅紀にも気づかれてたか。

「だよな…気になってさ…踏み込みがさ…」

「分かるよ!じゃぁ、俺が翔ちゃんのグローブ磨いていい?」

雅紀も同じだ。
雅紀も自分の道具は自分で磨いて、不具合が出れば自分で直す。

それに、礼儀正しくて、とにかく、自分に厳しい人間だ。
身体の線はまだまだ細いけど筋肉もしっかりあるし、手足が長い。
ピッチャーには持ってこいだ。

でも、それも高校まで。

「ねぇ、覚えてる?翔ちゃんがキャッチャーやるって言ったときのこと?」

雅紀は俺の使ってるタオルの反対側を使って俺のグローブを磨き出した。

「小5の時だろ?」

「そうそう!あん時の翔ちゃん、俺、すっげぇ、覚えてんだよね…」



******


「今年最後の大会、雅紀にピッチャーを任せようと思う!」

それは、小学校のクラブチームで坂本監督が言った言葉だった。

5年生になったばかりの俺たちはレギュラーになれるのだってそう簡単なことではないのに、坂本監督はピッチャーを5年の雅紀に託すと言った。

6年生たちは納得がいかないようで、坂本監督に詰め寄った。

「なんで、相葉なんですか?」

「コントロールだ。腕の振りがしなやかで左右も上下にも細かく投げ分けられる。」

「でも、この大会は…俺たち最後ですよね?俺たちずっとやってきたのに…最後が相葉って…」

6年生の気持ちも、今考えれば、わからなくもない。
ずっと、チームを引っ張ってきてくれたのは6年生だった。
小学生最後の大会で、まさか、先発ピッチャーを譲るなんて…思いもしなかっただろう。

「先発を任せる!ということだ。亀梨にはリリーフに入ってもらうことになる。最後の大会で勝ちたい!と言ったのはお前らだ。勝つために考えたのがこのメンバーだ。」

坂本監督は言い切った。

「俺はやだ。亀以外の球を受けるなんて嫌です。」

亀梨先輩とバッテリーを組んできた、上田先輩が涙を堪えて言う。

「じゃぁ、お前は外れろ。櫻井!お前がやれ!」

「えっ?俺ですか?」



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