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僕は君を連れてゆく

第31章 熱視線


キャッチャーの経験なんてない俺になぜ、白羽の矢が立ったのか…

キャッチボールをいつも、雅紀と組んでるから?

まさか、嫌がらせ!!

「お前は冷静に試合を見ることが出来る。肩も強いし。キャッチャーをやらせようと俺はずっと考えていた。相葉のクセや気持ちのコントロールもお前なら出来るだろ?」

坂本監督が言った。

俺に出来るかな?

「無理ですよ!翔には!」

上田先輩が言う。

「それでいいです。」

亀梨先輩が大きな声を出した。

「監督の意見に賛成です。ただ、キャッチャーは上田がやるべきです。翔にはこれから上田が教えていって来年、出来るようにしていく方がいいと思います。」

上田先輩は口を一文字に結んで涙を堪えている。

坂本監督は亀梨先輩の頭を撫でた。

「意見して、すいません。」

亀梨先輩も泣きそうだった。




******


「あん時の亀梨先輩と上田先輩、カッコ良かったよね。」

「うん。あれで翔ちゃんがキャッチャーやって試合やってたら、勝てなかったよね。」

「そうだな…上田先輩が盗塁二回、刺したんだよな。雅紀に声をかけるタイミングも監督がピッチャーを雅紀から亀梨先輩に変えるタイミングも最高だったよな。」

「本当に…先輩たち、今、なにやってるんだろうね?」

俺は弛んだ留め具をつけ直して、レガースを足に当てた。

「っうし!これくらい締めないとだよな…」

「こっちも、どう?雅紀が愛情込めて磨きましたよ!」

と、俺のグローブにキスするフリをした。

「なにやってんだよっ!」

部室内を片付けて、部室のドアを開けた。

温い風が俺たちを包む。

日が長くなってきている。

二人で並んで歩く。

雅紀はよく、素振りしたり、投球フォームの真似をしながら歩く。

今日もそれは変わらない。

「内角がな…」

そう言って、右腕を振り下ろした。

「なぁ、雅紀…爪のケアちゃんとしろよ?」

人差し指の爪の先が割れてることに気がついた。

「やっておく!大丈夫!」

雅紀は俺にピースサインした。


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