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僕は君を連れてゆく

第31章 熱視線

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改札を出たら、みんな下を向いて歩いている。

待ち合わせは確か、ここだよな?

久しぶりの再会に俺はドキドキしていて
昨日はやっぱり眠れなくて。
新幹線の中で寝ようと思ってたのに、距離が
だんだんと近づいてくるとさらにドキドキして、
新幹線でも結局、眠れなかった。

雅紀は、東京の大学へ進んだ。
医者を目指して、日々、勉強してる。

俺は地元に残った。
ただ、雅紀と一緒にいたいから、という理由で東京には行けないと思ったからだ。

地元で理学療法を学んでいる。

雅紀に刺激されたのはもちろんだけど、怪我をしてもリハビリをすることで野球をまた出来るようになっているプロの人たちを見ていて、俺もその手伝いがしたいと思ったからだ。

「翔っ!!!」

「雅紀っ!!」

3ヶ月ぶりの雅紀の笑顔。

少し、鼻にかかるその声も。

俺を“翔ちゃん”と呼ぶ、声も。

?!?!?!

「今、翔って…」

「待たせちゃった?」

何ごともなかったように話しかけてくる。

「なぁ!おぃ!」

雅紀は、荷物持つよ。と俺の荷物を持った。

「いや、いいよ。重たいから…」

「本当だっ!何入ってるの?」

「母さんが雅紀に渡せってあれこれ入れたんだよ!こっちの方が旨いもんたくさんあるからいらないって言ったのに。」

「あ、あれは?お饅頭、持ってきてくれた?」

「持ってきたよ!ご近所さんにも分けろってよ…」

「マジで?」

雅紀と並んで歩く。

お互いに荷物を持ってるから肩もぶつからない
距離で。

「どこ行くの?」

「うーん?」

「こんな荷物持っていける?先にホテルに置いてきたいんだけど…」

「俺んち。」

「え?」

「ホテルはとってないよ…」

「…」

思わず足がとまった。

「一緒にいたいよ…ダメ?」

俺は首を左右にふった。

「頭、とれちゃうよ?」

笑う雅紀。

雅紀…
結構、大胆だな…

「荷物、トランクに入れていい?」

駅の駐車場でトランクに荷物を入れる雅紀。

「うん。頼むよ。」

「あっ…これ…」


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